判断が揺れた瞬間
申請書DXの入口として、
申請書Excelに承認書シートを組み込む改善を行った。
利用者が申請書の入力セルを正しく埋めれば、
その内容を参照して承認書が自動的に完成する様式である。
設計としては筋が通っていた。
しかし、運用を始めると問題が見えてきた。
- 日付の記入漏れ
- 利用場所の選択漏れ
こうした入力漏れがあると、承認書側では、
「令和◯年◯月◯日付けで提出の申請について、承認いたしました。」
の日付部分が空白になる。
また、利用場所も記載なしとなる。
申請書をきちんと確認すれば防げる。
それは正論である。
だが、実際には漏れたまま起案してしまい、手戻りが発生することがあった。
ここで判断が揺れた。
問題は「確認不足」ではなかった
当初の前提はこうだ。
担当者が申請書を丁寧に確認すればよい
しかし、実務では次の問題があった。
- Excelを画面で細部まで確認するのは、意外と漏れる
- 承認書シートが、申請書のどのセルを参照しているかは
作った本人でないと完全には分からない
つまり、
- 「どこを見ればよいか」
- 「どこが欠けると承認書に影響するか」
という判断を、担当者の理解力と注意力に委ねていた。
これは確認の問題ではなく、
判断を人に押し付けている構造の問題だと気づいた。
前提を疑った
ここで前提を疑った。
- 担当者は毎回、全セルを漏れなく確認できるのか
- 参照関係を把握したうえで判断できるのか
答えは「難しい」である。
ならば、改善の方向は一つしかない。
担当者の判断を減らす
判断を構造に引き取る
取った改善策は、極めて単純なものだった。
- 承認書が参照する必須セルに空白があれば
→「要確認」 - すべて埋まっていれば
→「OK」
という判定セルを、印刷されないエリアに設けた。
入力前は常に「要確認」。
必要なセルがすべて埋まった時点で「OK」に変わる。
これにより、判断は二値になった。
運用の変化
運用ルールも明確に変えた。
- 申請書が届いたら、まずこのセルを見る
- 「要確認」なら、どこかに空白がある前提で丁寧に確認する
- 「OK」なら、流すように確認する
完全に確認を省いたわけではない。
しかし、確認の重心が変わった。
結果として、
- OK表示での差し戻しは、現時点では発生していない
- 手戻りが減り、確認作業の心理的負担も下がった
判断変更の本質
この改善で変えたのは、Excelの関数ではない。
変えたのは、判断の所在である。
- ❌ 人がすべてを確認する
- ⭕ 確認が必要かどうかを、構造で示す
「確認すればいい」という正論を捨て、
確認の要否そのものを設計に引き取った。
この判断が示すもの
DXという言葉が前に出ると、
新しいツールを導入することが正解に見える。
しかし現場では、
- 判断を減らす
- 認知負荷を下げる
- 手戻りの芽を早い段階で潰す
こうした設計の方が、確実に効く場面がある。
Excelのシートを一つ増やしただけだ。
だが、その一手は、
「人が頑張る前提」を捨てた判断変更だった。
ログとして残す理由
この判断は、
将来 Forms や kintone に移行したとしても意味を持つ。
なぜなら、
- 必須項目の欠落をどう知らせるか
- 判断を誰に委ねるか
という問いは、ツールが変わっても残り続けるからだ。
だから、この判断は
Shin-Labの「判断変更ログ」として残す価値がある。


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