判断のゆれは、善意から始まる―― キャンセル料という制度が壊れた瞬間

改善の現場で、いちばん厄介なのは
「明らかな非効率」ではない。

本当に厄介なのは、
善意によって静かに壊れていくルールだ。


目次

ルールは、最初から間違っていなかった

給食業務には、明確なキャンセル料の規定があった。

  • 3営業日前:無料
  • 2〜1営業日前:70%
  • 当日:100%

完全予約制で、
余剰を他に回すこともできない業務形態を考えれば、
この規定は合理的だった。

食堂業者が本当に困るのは、
「大人数が直前に一気にキャンセルされること」だからだ。

ルール自体に、問題はなかった。


だが、現場では守られていなかった

実態はこうだった。

  • 1人欠席なら、前日でも無料対応
  • インフルエンザなら仕方ない
  • かわいそうだから今回は特別

そして、その判断は
すべて理事長判断になっていた。

ここに、最初の「判断のゆれ」が生まれていた。


善意は、前提を壊す

一度でも例外を認めると、
次の判断が難しくなる。

  • 前はOKだった
  • 今回はダメと言えるか
  • どこまでが例外か

結果として、

  • 現場は毎回迷う
  • 上に確認が集まる
  • ルールは形だけ残る

ルールは存在しているが、信頼されていない状態
が生まれていた。

さらに歪みは広がった。

キャンセル料がかかるなら、
「欠席が出ても言わない」という団体が現れたのだ。

制度が、
不正直な行動を誘発していた


本当に守るべきものは何か?

ここで、前提を疑う必要があった。

なぜ、このキャンセル料規定は存在しているのか?

答えは明確だった。

  • 1人の欠席が問題なのではない
  • 大人数の直前キャンセルが問題なのだ

ならば、
なぜ「1人欠席」まで
理事長が判断しているのか?

この問いが、判断のゆれの核心だった。


判断を「理由」から「数」に移す

解決策は、制度を緩めることではなかった。

判断の仕方を変えることだった。

  • 10以上のキャンセル → 従来どおりキャンセル料
  • 9以下のキャンセル → 前日まで無料
  • 当日キャンセル → 一律不可

これだけで、状況は一変する。

  • 病気かどうかを考えない
  • かわいそうかどうかを考えない
  • 前例を気にしない

数を見て判断する。

判断は、
理事長から現場へ降りた。


権限移譲ではない。「判断設計」だ

これは単なる権限移譲ではない。

  • 基準を与えずに任せる → 迷いが増える
  • ルールだけ作る → 守られない

今回行ったのは、

基準・権限・責任の範囲を
同時に設計し直すこと

善意に依存していた判断を、
構造に移した。


判断のゆれが消えたとき、改善は定着する

この変更で起きたのは、劇的な効率化ではない。

  • 電話が一本減った
  • 判断確認がなくなった
  • 現場が迷わなくなった

それだけだ。

だが、ここが重要だ。

判断のゆれが消えたところから、
改善はようやく定着し始める


Shin-Labとして残したいこと

改善は、
フローを描いた瞬間に終わらない。

モニタリングのあと、
「なぜ、ここで人は迷うのか?」
と問い続けた先にしか、本質はない。

今回の学びを一文で書くなら、こうだ。

善意は尊い。
だが、善意に判断を預けた瞬間、
組織は静かに壊れ始める。

判断のゆれは、
無能からではなく、
配慮から生まれる

だからこそ、
構造で受け止めなければならない。


これは給食業務の話であり、
同時に、あらゆる組織の話でもある。

Shin-Labに残すべきは、
成功談ではなく、
前提が書き換わった瞬間の記録だ。

今回の判断のゆれは、
その条件を満たしている。

——
ここからまた、次のゆれが生まれるだろう。
それを見つけたら、また書けばいい。

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この記事を書いた人

現場と管理の間で、業務改善や小さなDXに関わってきた。
正解や完成形より、そのときの判断を記録している。

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